天に昇る気持ち

新年早々縁起の悪いことも起こっているが、軌道エレベーターの話。

参考記事の図では、
中間施設を、高度400~700キロあたり。(現宇宙ステーション)
宇宙ステーションんを、3万6千キロあたり。(静止衛星
宇宙船発着港を、7~8万キロあたり。
軌道エレベーターのバランサーを、10万キロあたり
に建設するとし、技術発展速度に変わりが無ければ50年後までに作る環境が整えられるとしている。

1.カーボンナノチューブが極めて高額。
2.中間施設までの400~700kmをどうやって人を運ぶのか。
3.中間施設から宇宙ステーションまでの3万5千キロ強は、世界1周分に近い。
4.宇宙港、バランサーへの移動手段、メンテナンス、駐在員など対応。
5.施設ができても人は生活できるのか?


1.カーボンナノチューブ(CNT)が極めて高額。
Googleで検索したら一発トップに出てきたが、それだけ注目度が高いのだろう。

菱三商事がサイト上で公開しているカーボンナノチューブ価格はグラム単価900~284,000円。
1グラムと言えば1円玉だが想像し辛い。そこで共和オーバンド#12(内径25.4mm、切幅1.1mm)で考える。
100gあたり1030本入りなので1個約0.1グラム。次に中間施設(400km)を作る場合、約36,363,636本分。
36,363,636×0.1=約3,636,364グラムに相当することになる。

1グラム900円のCNTを使ったとして、32億7272万7600円
1グラム284,000円の場合だと、1兆327億2737万6千円。
3万6千kmだと92兆9454億6384万円、10万km=258兆1818億4400万円になる。
全世界が倒産していいなら作れるだろうねwって感じの金額だ。しかも輪ゴムサイズのものしか作れないw
実際に作ればどれだけの費用がかかるのかが容易に想像できる。
もちろんこの金額の中にCNT以外などの建設費・製造費・原料費は含まれない。

ちなみに共和製#12輪ゴム(GE-011・1箱1030本入り)は、400円(Amazon価格)。仮に共和製の輪ゴム価格で作れたとしたらどうなるのかも試してみよう。
36,363,636÷1,030=35,305箱分 つまり、35305×400円=1412万2千円(400km)
3万6千km=12億7098万円、10万km=35億3050万になる。
これだと現実的で先進国なら1国1機は持てるかもしれない。
ということは、今のCNTを「225分の1」の価格に下げろということになる。

宇宙に出れば過酷な太陽風放射線を否応無く浴びさせられる。CNTだけでなく他の機材も耐えるだけのものを用意する必要が出てくる。


2.中間施設までの400~700kmをどうやって人を運ぶのか。
CNTには多くのメリットがあるが、直射日光に常に当たる軌道エレベーターにとって弱点になる点が多い。
CNTは伝導性、熱伝導性、水素吸着力が極めて高い。CNT自身の劣化要因にならないが他への機器に影響を及ぼす要因になる。宇宙では120度~マイナス150度でとてもこの温度を中に入れるのは危険だ。

記事には老若男女問わず行き来できるようになるとあるが、新幹線で400キロ移動するには最速2時間はかかるが、その間にトイレや休憩できるのか?と言う疑問がでる。
新幹線は横移動だが軌道エレベーターは縦移動だ。まさか新幹線で移動というわけにはいかない。


3.中間施設から宇宙ステーションまでの3万5千キロ強は、世界1周分に近い。
東京~ニューヨーク間が約1.1万キロ、飛行機(直行便)で13~15時間かかる。つまりこの3倍だ。
短く見積もっても40時間かかる旅路をどう過ごさせるのか?


4.宇宙港、バランサーへの移動手段、メンテナンス、駐在員など対応。
宇宙港を建設するってことは、軌道エレベーターに資材を積ませて運ぶという用途も考えられる。と同時に現場の駐在者も必要になってくる。
3.6万キロまで40時間かかるなら、7万キロ先は80時間、10万キロだと110時間以上はかかる。まさか飲まず食わずで3~5日暮らせとは言えない。


5.施設ができても人は生活できるのか?
その為に数多くの宇宙飛行士が長期間ソユーズや宇宙ステーションに滞在して人柱になってくれているわけだが、地に足が着かない生活というのはストレスが多いと思う。
人工的に重力をつくることを真剣に考えないといけないが、下記OKwave回答にあるように技術的に可能でも人体的、他機器に対する影響が小さくないとしている。なので床と靴が磁石のようにくっつくような靴を作るしかなさそうな気がする。

旅行ならともかく仕事で滞在しなければならない人は、無重力空間の耐性、適用性が必要だろう。それに毎日宇宙食を食べさせられることに対しても嫌悪感を抱かない人でないといけない。顎を使わない食事ばかりは美味しくないだろうし、いつもブロック食品では美味しくても飽きると思うからだ。


6.実際につくると20年はかかりそうだ。
最初はアメリカが率先してやろうとすると思うが、それでもアメリカ1国だけで作れる代物じゃない。
今ある国際宇宙ステーションISS)は、工数10年と建設費10~15兆円以上がかかっている。
費用対効果に疑問視があり、軌道エレベーターは逆風の中から始める事になってしまう。

作るならせめて軌道エレベーター3機以上は欲しい。1つは一般用、1つは企業用、1つは物資運搬用だ。
できれば倍の6機あれば、往路、復路として利用ができ効率的に稼動できる。
12階建てビルのエレベーターでは1機500~1000万円で作れるが、作るのは軌道エレベーター。1機
何百億、何千億それ以上かかるようなものをそんなに沢山建てられるはずはない。

そして何より利用料だ。
片道何千万円も出して使う利用者はそうはいない。東京~NY間の通常価格で8万円くらいだが、それでも簡単に出せる金額じゃない。


7.価値をどうみるか。
なにより宇宙ステーションや軌道エレベーターにどれだけの価値を見出せるか?だと思う。
スペースシャトルで幾つか宇宙空間上で研究されてきたし商品化されたものもあるかもしれない。でも宇宙産の製品、商品に俺は出会ったことがない。

ティージョブズ氏が生きていれば宇宙にiPhone工場をつくって、中華にも真似できないものを作ったかもしれないが、そんなものを作ったとしてもどうだろう、私たちの生活が豊かになるとは想像できない。

8.おわりに
もう去年のことだが地球に似た星がみつかったという記事が出た。600光年先だそうだ。
600キロ先なら新幹線で行けそうだが、ワープ航法ができる宇宙船でも造らない限り無理そうだ。

2回の世界大戦と無数の近代戦を経て今がある。でも私達が宇宙に出るのは技術的に無理だというよりも、精神面において無理があるように思える。俺自身もそうだが、世界全体があまりにも未成熟過ぎると感じるからだ。



夢を持つことは素晴らしい事だと思うが、プロセスをもって着実に進むのが懸命だと思う。



[参考元]
人を幸せにする技術:宇宙へ 夢運ぶエレベーター - 毎日jp(毎日新聞)
< http://mainichi.jp/select/science/news/20111230mog00m040009000c.html >

菱三商事株式会社
< http://www.hissan.co.jp/home.html >

株式会社 共和【輪ゴム・包装資材・粘着テープ・医療用品・タイヤ・チューブ・電線の総合メーカー】
< http://www.kyowa-ltd.co.jp/index.html >

宇宙ステーションの人工重力はなぜ実用化されない?(1/3) | OKWave
< http://okwave.jp/qa/q79865.html >