最初に3つ大きな事例を話さないといけない。
1つ目は現在でもネットを介してTV配信しているサービス「KeyholeTV」「niji」「sopcast」だ。
「KeyholeTV」はもともとTV難視聴地域のためとして時限的に許可されていたネットサービスだった。
しかし現在はその期限が終わっている。
後者2つは中華、台湾の事業者が行っているサービスで、日本からも利用できるが日本側では違法になる。
つまり前述3サービスは日本国内法において「違法」になる。「KeyholeTV」は元々日本国内で行っていたが拠点を海外に移しているのでグレー。
2つ目は、2008年~2013年にかけて争われた「まねきTV」裁判がある。
利用者が受信したTV電波を永野商店のまねきTVサーバへ送信し、サーバに視聴者が接続して見るという、いわばミラーリングサービスである。
しかし知財高裁は送信可能化権、公衆送信権に抵触するとして放送局側が勝訴。後に永野商店が上告したが棄却したため確定した。
3つ目。しかし2010年、ラジオをネット中継する「radico」が誕生。正式サービスは2011年。
NHKも2011年から「らじる」をサービスインしている。
放送事業主が自ら自社放送のネットで放送するという、皮肉な展開になった。
いくつか問題、疑問点、課題をあげたい。
1。日本の著作権法上は違法である「KeyholeTV」「niji」「sopcast」を取り締まらずに、
TOKYO MXの「エムキャス」を正式サービスインさせた場合の法律上の整合性はどうするのか。
2。「エムキャス」の時限期間サービスはほぼ全国対象とのことだが、なぜ全国対象を許可したのか。
3。同サービスが正式サービスインする際、radicoのようにエリア限定にするのか。
4。スポンサー、CMはどう対応しているのか。
5。著作権の問題。
特に1番目は拠点が海外にあるというだけで検挙されてない。しかし「KeyholeTV」「niji」「sopcast」は日本のTV放送を各サーバーへ送信している人がいるわけで、その人物は違法で取り締まり対象に成る可能性がある。その辺はどう考えているのか?
それ以外2~5については疑問点だが、4~5はradicoと同じ対処をしているものと考えられる。
2~3はデータを取るためだと思うが、放送法で送信地域は放送局の拠点があるエリアに限られている。つまり放送法を逸脱した放送になり違法になる。全国視聴を正式サービス後も許可してしまうと整合性が取れない。どうするのか。
これはradicoがプレミアムサービスとして月額350円(年額4200円)で限定エリア解放のサービスを行っている。たぶんこれを視野に入れての全国エリアでテストをしたいのだろう。
さて。東京の独立地方局がやる以上、主要5社とNHKはどうするのか。また他地域の地方局はどう動くのかが焦点になる。
日本テレビは買収したhulu日本法人で自社番組を放映している。フジTVやTBSもhuluでサービスを行おうとしている。テレビ東京はニコニコ生放送やニコニコ動画を使って一部の放送を有料放送化。
あまり動きはないテレビ朝日があるが、TV業界はネットでの活動を模索している向きはある。
TOKYO MXという独立地方局だからこそできるサービスだったかもしれない。しがらみが少ないからだ。
しかしradicoの成功例もあり、TOKYO MXが正式サービスインできて成功すれば他局も考えざるを得なくなる。そう言ったときに「KeyholeTV」「niji」「sopcast」の扱いをどうするか?が大きな課題になる。
つまり自分たちのサービスが違法性のある組織に食われることは嫌だからだ。
まねきTVを潰したときのように在京TVキー局らが彼らを訴える、又は対象のIPを封じ込めに走るかが注目する点だ。
以前ここで話したが、20~30年前の時代にはなかったTVゲーム、インターネット、スマホと視聴チャンネルが極めて多く増えている。魅力ある番組であっても視聴先が分散されすぎたため視聴率が取れない状況になっている。
広告を新聞・雑誌・電車吊革・街中・TVと多方面に展開するのと同様に、TVも見てもらうために多方面で展開することは不可避だと考えてのネット展開の本格検討が始まった。と思っていい。
radicoが成功を収めたことがTVに対しても影響、波及していることは疑いがない。
ただ今のradicoを見る限り、ただラジオをネットをミラーリングしているだけでそれ以上のものがない。
チャット欄や掲示板をつけろとは言わないが、ニコ生のようなリアルタイム・アンケートを付けるとか、B2Cの良さが無いのは今後の大きな課題だ。
いまの既存メディアは保守的で受動すぎる。もっと能動的に動くべきだとお思う。
TOKYO MXの番組が全国で視聴できるスマホアプリ「エムキャス」--実証実験を開始 (CNET Japan) - Yahoo!ニュース
<http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150701-35066756-cnetj-sci>
OISEYER Inc.とKeYHoleTVシステム
<http://www.keyholetv.jp/>
まねきTV裁判---著作権法はネットの敵か(1) 米国でも混迷する裁判とネット著作権問題 | 小池良次「シリコンバレー・イノベーション」 | 現代ビジネス [講談社]
<http://gendai.ismedia.jp/articles/-/2040>
まねきTV事件最高裁判決について | 知的財産法 | 企業法 | コラム | 弁護士法人東町法律事務所
<http://www.higashimachi.jp/column/topics55.html>
Ichiya Nakamura / 中村伊知哉
<http://ichiyanakamura.blogspot.jp/>