秋元AKB商法の是

俺もずっと秋元康氏を責めてきたし、これから責め続けるだろう。
1980年代にフジテレビと一緒におニャン子クラブを発足させてから、素人がアイドルになり得ることを知らしめた。
しかし秋元氏は張本人だろうか。いやその兆候はもっと前からあった。

歴史から入ろう。
1970年、TBS「ヤング720」を通じて芸能界デビューした天地真理氏である。その後も素人っぽい女性アイドルが生まれている。
しかし一過性に終わり、1972~1985年は歌姫と言えるアイドルが立て続けに生まれている。
1972年、山口百恵
1980年、松田聖子
1982年、小泉今日子中森明菜
1985年、斎藤由貴

斉藤由貴氏が歌手デビューした年におニャン子クラブが生まれた。

歌唱力、演技力を求める人がいる一方で、ど素人で歌も演技も下手なのに教育されないアイドルが混在していた時期が4年ほど続いた。

この間、歌唱力を求める人はどこに行ったかというと、渡辺美里レベッカプリンセスプリンセス、BφWY、TMNなどを好んだ。
いわゆる音楽バンドブームの中にあった。

1992年、安室奈美恵がデビューし破竹の勢いが長年と続いた。
安室氏はアイドル時代から長いミュージック時代を到来させた。
安室氏もアイドルだが従来アイドル路線とは一線を画していた。
10年以上は続いたミュージックシーンも2000年を超えるあたりからしぼんでいった。そして空白を埋めるように
2005年、AKB48が誕生した。


2015年、AKB総選挙で19万4千票を獲得してトップに
返り咲いた指原梨乃さんの話で持ちきりだ。
総選挙を始めた2009年の1位の得票数は5000票にも届かない票数で当選している。つまり6年で38倍以上に跳ね上がったのだ。
これは単純に売上が6年で8倍になったという言い方もできる。

2015年AKB総選挙の総投票数は328万7736票なので、総売上は42億7400万円にもなる。(CD1枚1300円換算)
先の値を使えば当初は1~2億程度の売上を42億まで伸ばしたということになる。

指原さんの得票数は金額に換算すると、約2億5220万円
一人10枚ずつ買ったとして1.9万人が支持したことになる。
実際は多くは1人1~2枚だろう。そこに数十~数百枚、中には千枚単位で購入するファン(支持者)がいることで票数を獲得すると言われている。実際、投票締切日翌日にダンボール箱がゴミ置場に捨てられてるというブログが上がっていることが多い。


・射幸心を煽るシステム

政治の選挙は1人1票だが、AKB総選挙は1人で複数票を持てるという民主主義に反するルールになっている。
これは富裕層にこそ多くの権限、主導権を持たせるというルールだ。
そしてAKBのアイドル達は、この富裕層をいかに多く懐柔させるかで自分たちの勝敗が決まるということを暗黙に承諾している。
AKBの運営・経営側はそれを暗黙ルールとした。

これ、MMOネットゲームに似ていると思わないだろうか。

1997年、ウルティマオンラインUO・日本は1998年から)が始まったが、ゲーム内アイテムやゲーム内金銭がヤフオクなどオークションサイトで公然と行われていた。
RMTリアルマネートレーディング)である。
RMT行為は射幸心が煽られることから発せられる行為だ。

RMTを使う人が異口同音に言うことは
「ゲームする時間がないからそれを金で買っているだけ」
ではAKB総選挙で大量にCDを購入する人も
「コンサートに行けないからその分CDを買って応援している」
と言うのだろうか。

現在はソーシャルゲームが、射幸心を煽るようなシステムになっている。
2012年、DeNAGREEなどが運営のゲームサイトが射幸心を煽るものとして国会などで取り沙汰され問題になった。
その後急遽業界団体が結成され対策に乗り出すが、思ったほどの効果はなかった。

AKBの話に戻ろう。
富裕層が数多くの票数を持つのは自分の推しメンをトップにしたいという射幸心が煽られた結果である。
1人が複数票を持つということは、正当行為であるはずの組織票を作るという行為を行わせないということでもある。組織票をつくるにはコミュニティーを作り、根回しをし、相手の同意を得ることが不可欠だがその行動を禁じるに等しい。
これは投票者にとっては大きな手間を省かれていいだろうが、コミュニティーこそが一番の楽しみであるはずなのに、それを完全に奪い取っている。

海外でもRMTは現存する。韓国や中華ではそれ故に死亡や恐喝事件がある。しかしアイドルを宿主として莫大な金銭が行き交うことはない。別に秋元AKBを真似た商売があってもいいはずなのに、出てこない。
ということはこれは日本特有の事象と言える。

・今後のAKB、秋元氏
AKBは大きくなり過ぎた故に、もしAKBを無くすとなるとアイドルの所属事務所、所属レコード会社、TV局や雑誌社など広くに影響がでる。その前に売上が限りなく落ちて売り物にならなくなったというのなら別だろうが、年1度43億も売り上げる商品を販売中止にすることは秋元氏がやりたくても、もう周りの人間たちがそうはさせないだろう。

指原さんは今回の出馬を躊躇ったというが、1人で2.5億を売り上げる者を下ろしたくはない。つまり2016年も出馬しろとプッシュする人がでてくるだろうから、指原さん本人はかなり辛くなってくるだろう。

またただでさえ初期メンバーが独立または脱退していく中で、
2015年は1億円超が7名もいた(昨年は4名)
これは景気の微回復で投票する富裕層が増えたとすれば、向こう数年はこの状態が続く可能性がある。
景気後退が始まるだろう2020年まで続くとなれば、あと5年は所属アイドルは辞めたくても辞めさせらてもらえない辛い状態になっていくことになる。

今回、秋元才加さんは立候補を辞退している。
過去の自身の結果が振るわなかったことから決めたかもしれないが、今後秋元さんのように辞退すれば良かったと思う人が出てくる可能性はある。

AKBの売上が極端に落ちない限り、この先も続いていくだろう。
しかし主要メンバー脱退が増えており、またこれといったヒット曲がなければ自然と人気は下降していく。TV局などからの需要はあっても、一般人の需要が下降するというねじれ状態が起こりうる。
既にそういう見方をする人もいる。

秋元氏のビジネスモデル、アイドル論が良いか悪いかの判断はしない。
少なくとも日本ではビジネスとして通じており一定以上の利益を得ている。これは数字上は支持されていると見ていい。

射幸心を煽る商売は世の中にごまんとある。
いま本当のニーズ、欲求とはどういう状態なのか。考える時期にある。
射幸心を煽らないと商売にならないのか。商売の本質とは。
自分なりに考える時がきた。そう考えるほうがいい。