手探り中です。とそれだけの内容だった。


久しぶりにセミナー?に行ってきた。
パネラーは、ライター・まつもとあつし氏+フィギュア作家・安藝貴範氏+映像作家・長江努氏の3方。(形容は私の主観なのでお断りしておく)


まつもと氏のアニメ業界の変遷、現状、生産工程の変わりについて語られた。
1962年に鉄腕アトムがTV地上波で週放送され始めた。当時はアニメ制作社員の給料が、当時サーラリーマンの「2倍」だったそうだ。(役職など詳細は不明)これは俺は初耳だった。

制作工程の変わりも語られた。スポンサーとTV局からアニメ制作会社に発注があるという流れと、エヴァンゲリオンに代表されるような製作委員会制度が近年確立されたということだ。
前者にも利点はあるとフォローあったが、製作委員会は開発の独立性が出たと言う点をメリットとして上げていた。一方、スポンサーが製作委員会に入ると漏れなく「CM枠で500万円あります!」と言う話で場内が沸いた。これは製作費とは別に500万円分のCMを流せという無理難題wで、いわばお布施をしろということらしいw

こういう中で、無料ネット配信というビジネスモデルについて少しだけ触れられていた。
時間的には長かった方だと思うが、内容的には濃い話しではなかったので記憶が薄い。


上記以外で頭に残ったのは安藝氏が仕事で中華に行った際、学生に「勝手にコピーして売るのはどうか?」と質問すると彼らは「コピーされているから君の作品は広く知られるようになったんだ」と返されたそうだw 安藝氏は何故悪いのかについて説いたところ彼らはようやく理解したようだが『説得に一人2時間はかかるw』と言って失笑していた。

長江氏は、もともとNHK教育番組などの製作をされている会社だそうだ。その中でも主にNHKBSで放送されていたデジタルミュージアムに携わっておられ、良作な素人作品に数多く触れ「これを活かしたい」と思ったのがアニメに踏み込んだ発端だと明かしていた。
しかしわずか15分程度の作品でもTVアニメ並みの製作費がかかってしまったため、四苦八苦したし今もそうだと語っていた。同社アニメ「イブの時間」は、ネット配信から始まり3年経つが、いまだに製作費などとの格闘から離れられないと苦悶していることを滲ませていた。

またニコニコ動画でコピーされた自社アニメが流されたことに苦痛を感じたが、ニコニコ動画に付けられたコメントが好意的なものが多かったので、製作スタッフのモチベーションになったと語っていた。その為、Yahoo動画で既にネット配信していたがYahoo側と協議をして、ニコニコ動画に削除依頼することを控えるよう申し合わせをしていたそうだ。



最後の5分間は質疑応答だったが、核心を触れるような質問が出ると言葉数が少なかった。
また最期に安藝氏、長江氏のコメントで締められたが、今は本当に手探りな段階で、とにかく今は自分たちが作りたい作品だけ作ろうと思っていると言う感じだった。

これは俺の主観でしかないのだが、
作品のローカライズはやらなければ売る気が無いも同然だと考えている。それは車ならハンドル座席であり、蕎麦なら関東と関西で変えて売るのは今や常識だ。ゲームでもローカライズせず売るなんて考えられないとゲーム製作会社が言うほどになっている。
またセールスを成功させるのと、作品を成功させるのは意味が違うと俺は考えている。
良作だから売れる。まあ確かにそうだと思うが、じゃあゲームに当ててみると売れる作品は良作である以外に「ライト」「カジュアル」作品であるということが要件になっていることが分かる。特に日本ではそれが顕著だ。
じゃそんな中でなんでFPSが売れるの?と言う所になるが、FPSはようは戦争ごっこだからだ。子供のころ、指を鉄砲とみなして友達と遊んだことは無いだろうか。それに近いものがFPSには有るように思う。

だから良作だから売れるという意味付けは間違いで、良作でありながら性向としてライト、カジュアルを併せ持つ必要がある。というのが俺なりの考え方、見方だ。
ただ良作だけでは売れはしない。


先日書いたが、やはりコンテンツ業界が抱える問題はコピーとコピー商品だ。
これは携帯電話で着うたがヒットする要因として、携帯では完璧なくらいコピーができないからだという説がある。だから携帯のような環境が必要だという話しが出るのは当然だ。
しかし一方で、このセミナーで上がってたようにニコニコ動画で火が付いたり、社員の励みになるという「プラスの要因」がある。それまで刈り取ってしまって良いのだろうか?となると、企業経営者と作品著者の2つの苦悩が出ることも当然だと思う。これは先のテレビ東京の方も同じだと語っていたので皆同じなんだなと言うのが分かる。

コンテンツホルダーとして、コピー配信やコピー商品を「どこまで許容するか」
それはコピー配信やコピー商品を、広告費として換算する必要があると言うことではないだろうか。TVCM料は19時頃では30秒1000万円、一般的時間で15秒100~200万円だ。
ビデオリサーチ社が公表している数値に基づくと視聴率1%で約18万世帯、同約40万人が見ていることだから、視聴率15%だと270万世帯(約600万人)への15秒間の広告宣伝費が200万円ということになる。
これをネット配信ならびに、コピー頒布・配信・販売を比較検討する必要があるのではないだろうか。
未だに削除されてないがwYoutubeにアップされている「侵略!イカ娘」は、TV放送1回分あたり約3~8万再生数になっている。これをコンテンツ販売の宣伝費として換算した場合、視聴率0.4%分となり広告費80万円相当になる。これは1日1時間相当であり、1日24時間x日数分で換算すれば相当な広告費がタダになっている計算になる。
・・・ではオカシイだろw
ようはそこからどれだけの実売上げに繋がっているかを評価しなければならない。
ネットSEOで言うところの「コンバージョン率」がどれだけ上がっているか?を計測する必要があるということだ。
コピー品が、規定のコンバージョン率より高ければ継続を認めれば良いし、低ければYoutubeニコニコ動画などに削除依頼し、コピー頒布者には刑事裁判を起こせばいいということになる。
だたコピー品に対してどこで線引きをしていいかは、商品(作品)から企業性質によって左右されるため、換算方法は一定ではないと思う。だから正確にコピー品を評価するのは難しいだろう。


俺個人的な結論としては、
現場の人は「とにかく先陣切ってやることで、アドバンテージを得たい」「でも今後などについては分からない」「アニメがどうなるかも分からない」ということで終始している。
俺は「コピー品とどう付き合っていくか」がこの先の課題だと思う。


アニメ自体は、作品数では飽食の時代だ。でも質や内容についてはむしろ後退している感さえある。2006年から作品数が徐々に減少傾向であることはセミナーで触れられていた。
それは1つは日本国内に限定すれば少子化が反映されていると考えられるし、過去作品のVODに流れているからという見たかも出来なくもない。また2008年のリーマンショックで投資家が投資してくれなくなったことが影響だとも言える。
俺が問題にしたいのは、じゃあ年間どれだけの作品があれば業界として潤っていると考えることが出来るかと言う”「閾値(ボーダーライン)」を設定しない”ことだ。
セミナーでまつもと氏は数には触れるが、どこがどうでということは一切明確にしていない。それは俺の本を買って読め!と言いたいだけなのかもしれないが、自己の立場・意見を明確にしないのは逃げだし、業界を盛り上げて行きたいという思いは無いということを示していることになる。それが中立性を堅持しなければならないジャーナリストだからという理由を言うのかもしれないが。


先の事は分からん。そんなの誰もがそうだw
そうではなく世間が決めないなら俺が決める!くらいの気概をもって業界当事者らは挑む必要があるのではないか。俺はそう感じる。




【DHGS×アスキー新書】「生き残るメディア 死ぬメディア」出版記念セミナー|デジタルハリウッド大学
<http://gs.dhw.ac.jp/event/20100110/>