権利の主張は、正当化される。

まず1つ目。守秘義務違反の可能性。
係争中で、相手の担当者名こそ伏せてあるが社名は実名を挙げていること。何より事の経緯が具体的に表現されていることは、ルール違反ではないのか?

2つ目、契約書の内容。
契約に増量分(追加発注)について取決めを明記していたかどうかが記事には書かれていない。
はてなコメントにもツッコミがあったが、これの有無で原告側の立場は大きく変わる。

3つ目、元請け側の契約確認ミス。
当初2.5MB分の発注で、既著作分から2MB分流用可としていたがその後流用「不可」となったのは、既著作分に対して流用可否つまり著作権や再利用権について法的確認を怠っている可能性が高い点がある。

4つ目、納期。
当初納期が1月末。だが既著作分からの流用が停止となったため納期が同年3月に延びた。とあるが、記事には納期を3月に延してもらったと言う明記はない。またプラス2MB量の追加発注があるのなら、新たに契約書を書くべきだと思う。

5つ目、発注元と元請け側の折衝。
どうも発注元と元請けとのやりとりが杜撰だったと感じる。
最初に仕様書を出した時点で精査するべきところを、急遽舵取り変更をしてボリュームを上げ、その結果そのしわ寄せが下請けに来たと言う感じがする。


話しが逸れるがこの記事で分かった事は、
前作がテキスト分で3.5MB(1200文字原稿用紙で約1529枚分、単行本(350P)換算で約4.3冊分)ということ。
当初の依頼分2.5MB(同約1092枚、同3.1冊分)から、実質製作分4.5MB(同約1966枚、同約5.6冊分)の差分である原稿874枚分の追加発注があったということだ。



係争の争点は、著作権はもとよりどちらに瑕疵(ミス)があったかだ。
元請け側は杜撰さが見られるし、下請け側は自分たちの思い込みが強かった気がする。
そもそも2MB分の既著作物から2MB分(原稿約873枚分)の転用を許可されていたのに、製作に入ってからこれを禁止した時点で、当初の契約は破棄されるべきだ。更に言えばここで契約上の瑕疵が相手にあるのだから下請け側は違約金を取れた。
この時点で契約を仕切り直しして、ここから製作分量と納期、契約料金などについて再度調整すべきだったと俺は考える。

次に分量が1.8倍になる前に、当初の分量を超過することが読めたはずだ。そこは元請け側が試算し私たちに相談すべきだと主張するかもしれないが、そこは先に手を打たないと今回のような後の祭りになってしまうリスクを考えるべきだったと思う。



つらつらと書いたが、両者または三者の契約書詳細が分からない以上、いくら書いても邪推の域を越えない。
裁判中で詳細に第三者に話しているというのは下請け側としては大きなリスクを負うのでは?と強く思う。記事中で「朗らかな性格なのに」と自身フォローしているが、これでは朗らかな性格とは受け取れない。マスコミに話すにしても裁判結果が出た上で行うべきだった。

上記以外にも同記事には多くが語られている。こう言う話はいままで日本のエンターテイメント系で再三再四行われてきた馴れ合いだったと思う。常に下請け、孫請けの会社が泣いて事無きにしてきた部分。

私の前記事「食い逃げはイクナイ」でも書いたが、下請けだからと何でも許すのは本当に良くない。
その時点では自分だけが泣けばいいと考えがちだが、結局は業界全体の風潮になってしまうからだ。これではどんなに才能あっても延びる人や会社がいなくなってしまう。


記事に下請け側の方から「狂犬集団」という言葉が出ているが、裁判する人=狂犬(集団)という捉え方は良くない。
それなら何故、日本国は法治国家なのか。ということも問われることになるからだ。
特に今回の話は個人的な恨み辛みだけで係争している部分ではなく、業界全体に波及するような内容だ。
裁判は、それ自体は極限定的ではあるが事の次第を公開しながら、裁判所という第三者機関を通じて事の良しあしを当時の常識、法律、判例に沿って明白化、明確化する行為だ。それに後ろめたさや批判があるなら、それを語る人物、団体は民主主義国に住む権利などない。


今の世の中、昔と違って価値観や趣向がかなり細分化されてきている。
良い面もあるが、一度でも折り合いがつかなくなると収拾がつかなくなる。それを補うのは契約書(つまり同意書)であり、その先に裁判(裁判所)がある。

今は2010年なのだ。21世紀なのだ。1970年、1980年には戻れはしない。その事実を認識すべきだと思う。



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