崩壊する声優。

以前から声優自らがTVに出演することはあった。しかし昨今のようにTV番組へのゲスト出演、
準レギュラー出演(BS、CSではレギュラー、冠番組もある)は無かった。

それ故、マイナーではあるが、声優という職業がしっかり自立していた。


転換期は、1990年頃。
それまでアニメの主題歌は、歌手やシンガーソングライターが歌っていたものを声優が歌い始め、
聴取率が下がるのを抑えるためか深夜帯のラジオ番組に声優の冠番組が多く開始された。
また1988年にPCエンジン CD-ROM2(NEC-HE)、1991年にメガCD(セガ)がリリースされ、
CD音質の音楽、声優陣を配したドラマティックなゲームが多数リリースされ始めた時期でもある。
図らずも、それまで裏方の仕事から、声優にタレント性が求められ始めた時期であった。


ようやくここで下記のブログに繋がるのだが、
宮崎氏が声優を揶揄する発言が飛び出したとされるのが同氏の「紅の豚」(1992年作)の時とされている。

予め言っておくが、宮崎氏が声優を揶揄するのは勝手だ。しかし同業である声優を教育する責務もある
と考えるのが道理で、単に揶揄,批判するのは無責任だと断ぜざるを得ない。
ある話では、富野由悠季氏は宮崎氏と異なり声キャストは声優を配し、その上で高いパフォーマンスを
求めて声優を育てているという話もある。(富野氏の件の出典が不明瞭なので言及できないが)


過去のジブリ作品には殆ど声優職の人は充てられていない(島本須美氏など超一流声優を除いて)のも
事実で、最近はジブリ作品に留まらなくなってきている。

実際を確認こそしてないが、TVアニメなど1話の製作費1,000万円ほどで限りなくスポンサー頼みだ。
一方の劇場作品は、スポンサーの投資は当然あるが、入場者数によって売上げが大きく変わる。契約
内容にもよるが、ジブリ作品のように大ヒットすれば俳優(声優)らのギャラも比例して増す。
つまり稼げる仕事をどんどんタレントやTV俳優に取られていっているのが、「現状」なのだ。


年間50~100本前後のアニメ作品が作られると言うが、本当に売れる作品は一握りだ。しかもTVアニメ
に限って言えば少子化、塾通いによってゴールデンタイムだった番組は日曜・午前中に移動させられた。
俺だけかもしれないが、日曜午前中は寝ている人は少なくないと思う。そんな時間帯に放送しても、
スポンサーは食指向かないは視聴者も見ないはでは、モチベーションが上がるとは思えない。

じゃあ声優プロダクションはどうすればいいのか。
そこで苦肉の策として、今なら平野綾さん、水樹奈々さんなど歌が上手く、外見が良く、タレント性に
富んでいる声優に大きな付加価値を付けて売り込もう(言いかえれば穴埋めしよう)と考えたのだろう。
水樹さんに限って言えば西武ドームで数億円の売上げを出すくらいの、名実ともにトップアイドルに
なった。
しかしその陰で日当1~2万円の安い給料、月に数回程度の声優をやって苦労を余儀なくされている人
は少なくない。容姿よく、歌上手くなんて整形手術したって届かない、だけど声優続けたい人にとって
凄く過酷でモチベーションを保ち辛い環境になったことは間違いないだろう。


前述したことは俺の正直な考えだが、正直なところアニメに専業声優(俳優)は不要だ。と思ってもいる。

クレヨンしんちゃん野原しんのすけ役は矢島晶子さんが演じているが、当初は普通過ぎて視聴率が
取れないことで悩み、苦悶した結果、あの独特なエキセントリックな声になったと言う話がある。
このようにエキセントリックさがウケて大ヒットに至るケースはあるが、数でいえば極少数。
じゃあリアリティーで言えばどうか。と言えば、あんな声、喋り方の幼稚園児は日本狭いと言えど、まず
いないと思う。

クレヨンしんちゃんは、内容こそ下ネタ目立つが子供向け作品だ。
じゃあクレヨンしんちゃんのノリで、例えばエヴァンゲリオンガンダムといったリアリティーを求める
作品に当てはめたらどうなるか?と考えれば、明らかにミスキャスティングと言われるはずだ。

故に非現実的で明らかに子供向けタイトルの場合はエキセントリックさは視聴率、売上げに貢献するが、
そうでない場合はエキセントリックな声は「必要無い」し「邪魔」だし「作品を壊す」と言える。

結果。意味こそ違うが宮崎氏と同様に エキセントリックな声は、必要無い。という結論になる。


これからはTVやネットに露出して売り込めない人は、稼げる職ではなくなることは確かだと思う。
3度の飯より演じることが好き!アニメの裏方をやっていきたい!と言う人を除いては、この先もっと
厳しい世界になることは疑いの余地は無いと思う。

ましてや声優といってもエロアニメ、エロゲームでの配役を受ける場合もある。男性もそうかもしれないが
女性は自分の裸を出すことは無いにしても凌辱的なことをせざるをえない場合だって考えられる。

それでも耐えれる。と言いきれる人でないと、かなり険しい世界だと思う。


色々書いてきたが、声優がどうこうという話は当然あるのだが、もっとアニメ業界の中心人物が
旗を立てて振り、リーダーシップをもって変えていかないと、悪い話ばかりになってしまうのではないかと
憂慮する。

水樹さんや平野さん達を非難しているわけではない。それはそれでとても良いことだと思っている。
だが勝って兜の緒を締めよではないが、いまここで胡坐をかくは恥だという思いを持って欲しい。
声優業界にそう言いたいのだ。



宮崎駿監督と沢城みゆきさん:いいたい砲台 Grosse Valley Note:So-netブログ:阿伊沢萬 さん
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